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 『世界は「使われなかった人生」であふれている』

 著者/沢木耕太郎

著者の沢木耕太郎さんが、映画評論家の淀川長治さんと対談した際に
淀川さんから映画を引いたら何が残るんですか?と訊ねたそうです。
すると、淀川さんは、あんたはやさしい顔をして
ずいぶん残酷な質問をするね、と笑いながらこう答えてくれたそうです。

「わたしから映画を引いたら、教師になりたかった、という夢が残るかな」

これと同じような質問を、
女優の吉永小百合さんにもしたことがあるそうです。
もし、女優になっていなかったらどんな職業についていたと思うかと。
すると、吉永さんは少し考え、こう答えたそうです。

「学校の先生でしょうか」

淀川さんにも、吉永さんにも、もしかしたら
教師になっていたかもしれないというような分岐点があって、
その分岐点を、こちらではなく、あちらに向かえば、
映画評論家の淀川長治と映画女優の吉永小百合はなく、
教師の淀川長治と吉永小百合が存在したかもしれないと、著者は言います。

つまり、だれの人生にもそのような分岐点があって、
その結果、もう一つの「使われなかった人生」が存在している。

僕もたまに、あの時もし、別の道に進んでいたら
どういう人生を送っていたのか?
と考えることがあります。

こういうことって誰もが考えるのではないでしょうか。
世の中には多くの「使われなかった人生」が存在している。

映画『旅する女、シャーリー・バレンタイン』も
そんな「使われなかった人生」を思い起こさせる映画で、
そこから沢木さんによる批評でもなく感想でもない、
読んでいてとても心地よい映画評が展開されていきます。

この本は、沢木さん独特のエッセイを織り交ぜた映画評を
集めて一冊にしたものです。

他に『バグダッド・カフェ』、『ダンス・ウィズ・ウルブス』、
『17歳のカルテ』など、全30編の映画評。

オススメですので、
ぜひ、読まれてみてはいかがでしょうか。

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